被災地視察の武蔵大・奥村ゼミの学生さんと、河北新報でディスカッション(12月3日)
武蔵大学の奥村信幸さん(メディア社会学)とゼミ学生一行が今年も石巻の大川小などを視察し、河北新報社で編集部長の大泉大介さん、OBの私と、学生さんたちが見聞きした被災地の現実と声、報道現場の見方や取り組みをめぐってディスカッションをした。
奥村ゼミの被災地への旅はもう10年を重ねる。帰途の仙台に寄ってくださり、奥村さんと旧知の二人と質疑の場を設けている。震災遺構になった大川小や門脇小、石巻日々新聞などを訪ね、現地の人の話を聴き、その感想や問題意識、報道する側への質問を率直に投げかけてくれる。その継続に頭が下がり、また毎年の楽しみになった。
私は、写真にある被災地の2011年とその10年後の空撮を見比べてもらった。海辺の町々の変貌した風景、高台移転の跡の祈念公園の埋めようのない空間、膨大な土砂で嵩上げした後も人も家もが戻らぬ白い空地、すっかり別な街で新しい住民と暮らす再建地…。
「復興って何ですか?」という学生さんの問いがあった。「復興」なる言葉を筆者は、政治家や行政、「記念日報道」からしか聴いたことがない、と話した。当事者の誰も知らないその答え、「年を経るごとに寂しさが募る」という当事者の声、現在と3.11の風景の向こうに被災者が見る「失われたもの」の姿や景色…。それらに思いをはせ、耳を傾け、ともに見ようととしなければ、と伝えさせてもらった。今年はどんな出会いを、東京の若者たちは持ち帰ってくれただろう。
