見えぬ来年という未来、コメの一粒に感謝の秋

 先日、北海道の息子を訪ねた折、リュックに詰めたコメを置いてきた。朝ドラで見る食糧難時代に戻ったみたいだった。スーパーやドラッグストアに5㌔、10㌔詰めの新米が届き、以前の売り場の光景が戻ったが、値は1・5倍ほどに上がった。給料の安い若い世代だけではないだろう。多くの生活苦の人びと、筆者の団地の高齢者らも、9月は生協の産直米が中止され、買う米のない不安、その後も食卓の品々の高騰に年金生活を圧迫される不安にある。
 昨夏の異常高温がもたらしたコメ不足。対策を求めた国内の多くの声に、岸田首相は素知らぬ顔で、坂本という農相は「9月になれば新米が出回る、解消される」と、制度を守ること優先の役人のペーパーを棒読みした。「(震災が)東京でなくて良かった」とほざいた元復興相の無責任、当事者への無関心を思い出した。
 初任地の山形で長い友人の農家から、1年を通してコメを買わせてもらうことにした。「おう、いいよいいよ」と喜んでくれた。震災以来、仲間を募り被災地・石巻のワカメを食べて支える活動をしている友人がいる。やはり海も温暖化し今季は未曽有の減収となったが、それも分かち合って住民を応援している。生産者とつながり共に生きる意味を教えてもらった。
 コメの先行きも減反時代とは違う。農水省の役人が机で考えるほど計画的に操れるものでないと、この現状が教えた。能登の被災地、東北では山形、秋田などコメどころを襲った豪雨水害もあった。来年が予想できぬ不安は農家も同じ。「肥料代も資材費も倍に上がり、米価が上がっても足りない」と山形の友人はこぼす。一方では消費者のコメ離れの不安も抱えつつ。
 「自民党総裁選をテレビで見ていたが、この国の食料自給率に触れたのは石破さんくらい。自給率もコメの値も、他候補はどうでもよいのだ」と別の農家が憤っていた。高市さんには落選不安の裏金議員らがしがみついたのだろう。(統一教会総裁を「まことのお母様」と賞賛する動画を露呈された宮城1区の離党代議士が、高市さんの推薦人だったのにはあきれ、勝ち組になっていたらと思うと空恐ろしかった)。
 石破さんが勝ったのは、よりましな変化とみてよいのか。