雲隠れし、逃げる首相に思う

『有名な〈男子の本懐〉のほか、〈およそ政治ほど真剣なものはない。命がけでやるべきものである〉と語り、銃弾が残る体の痛みを押して国会に登壇した浜口雄幸。その浜口から蔵相就任を求められて〈一命を賭す〉と約し、財産目録を書き出し妻に事後を託したという井上準之助。
「あの頃の政治家は、いつでも国に殉じ、腹を切る覚悟でした」』

テロに倒れた昭和初めの政治家たちの一節は、筆者が新潮社「フォーサイト」に連載中の『引き裂かれた時を越えて ニ・ニ六事件に殉じた兄よ』11 回に記しました。
文中最後の言葉は、弘前で昨年他界した主人公の104歳の女性から聞かされました。続きの言葉があって、「それに比べていまの首相は…」。歴史は鏡。雲隠れし、記者の質問からも逃げる姿に、その憤りの意味がいまよく分かります。