新著「被災地のジャーナリズム 東日本大震災10年『寄り添う』の意味を求めて」が、明石書店から出ました!

 一言で震災から10年の節目など、とても振り返ったり語ったりできません。私の場合には、先に「福島県沖地震 『最大震度』を観測した郷里・相馬から」(TOHOKU 360)の記事に記しましたように、終わることなく、その重荷を増し、復興とは何かを見えなくしている、と感じます。それを、2月13日の大地震は無言で示しました。だから、その現実をその場から発信し続ける者が、東北だけでなく、全国に生まれる被災地に必要なのだと思うのです。
 私なりの10年を振り返り、考えた「被災地のジャーナリズム」という本を作りました。震災、原発事故では7冊目になります。被災地で当事者の人々に出会い、その言葉と思い、風景の変容を伝えた論考を中心に、歩きながら立ち止まって考えてきたことをまとめました。現場に居合わせた者はそれぞれの小さな使命に出合うのだと思います。それを伝える一冊になれば幸いです。
 表紙は今年の正月2日、郷里相馬の港から初漁に向かう出船の光景です。暗い闇と小さな光が漁師たちの心象のようでした。一言にすれば、震災であまりに軽い言葉になった「寄り添う」の意味とは本当は何なのか、被災地の取材者の10年の素朴な問いが、この本のテーマになりました。