フォーサイト連載「引き裂かれた時を越えて」が完結しました!

 1936年の二・二六事件を題材にした連載「引き裂かれた時を越えて 二・二六事件に殉じた兄よ」が、新潮社「フォーサイト」にてきょう、16回で完結を迎えました。二・二六事件で銃殺された青森出身の中尉と、その兄の知られざる真実を戦後、語り続けた妹の物語でした。お読みくださった方々、ありがとうございます。
 世紀が遷り変わった年、「時よ語れ 東北の20世紀」という河北新報の連載取材で、当時80代だった妹たまさんに弘前で出会いました。映画に描かれた決起将校像とは違う、あの時代の若者の姿を聴かせてもらい、兄の思い出をひとつも漏らすまいと書き綴った「記憶のノート」の数々に触れ、執念の語り部の思いに打たれ、弘前に通うようになりました。
 ご存命のうちに広くお伝えしたい、と念じましたが、短い新聞記事で到底書き切れず、そのうちに震災が起きて、焦るうちに、弘前の妹さんは2年前、104歳で他界しました。時と共に歴史の当事者が喪われていく現実と畏れを我が身で知り、震災ルポを掲載していただいてきたフォーサイトの前編集長にご相談した、というのが経緯でした。
 長いノンフィクション経験のない元記者の挑戦でしたが、タイムスリップするように大正から昭和初めの資料を探し、意味を読み解き、今では忘れられた現場を訪ね、たまさんのノートに導かれて迷い子にならず、何とか完結に漕ぎつけました。秋に本にしてくださるという出版社のお話もあり、ようやく墓前で報告できます。過酷な時代にに引き裂かれた兄妹も、いまごろ、彼岸で再会したかもしれないな、と想像しています。