青森出身の青年将校と妹の二・二六事件を描く、初のノンフィクション『引き裂かれた刻を越えて』が刊行されます

 ご報告です。二・二六事件(1936年)に参加し銃殺刑になった津軽出身の中尉、対馬勝雄。知られざる生と死の軌跡を、妹の目から掘り起こした本を、ヘウレーカより10月12日に刊行します。『二・二六事件 引き裂かれた刻(とき)を越えて~青年将校・対馬勝雄と妹たま』。新潮社「Foresight」に2019年8月から16回連載し、エピローグを書き下ろした私の初めてのノンフィクションです。https://www.heureka-books.com/books/1521
 妹とは、弘前市で一昨年6月に104歳で逝った波多江たまさん。私が河北新報時代の22年前の取材で出会った、令和まで生き抜いた事件の最後の語り部です。
 青年将校らは大凶作と救いなき貧困が続いた東北の農村救済や、癒着した財閥と政治家、陸軍中枢の排除など国家改造を掲げ蹶起し、わずか4日で鎮圧されます。
 あまりに純粋だった東北出の若者の蹶起。その声を「暗黒裁判」と銃殺で封じ、遺族にも沈黙を強いた軍。心優しかった兄を愛し、運命の理不尽を憎み、家族の知る真実を伝えようと、妹は戦後、タブーを破って語り始め、兄の一切を忘れまいと膨大な「記憶のノート」を残します。弘前に通って、それらの証言を託されて編んだ、兄妹の酷い別離と八十余年の時を越えた魂の再会の物語となりました。
 これも東北のローカルジャーナリストの仕事です。どうぞ、お読みいただけたら。