東北文化学園大、尚絅学院大での「現場と教室をつなぐ」「当事者とつながる」授業に成果あり。
12月21日、年内最後の授業を終える。今期から担当する東北文化学園大(仙台)のマスコミュニケーション論はこの日の11回目から、3回にわたってインタビュー体験。メディアの報道と関わる当事者をゲストにお話を聴き、受講生たちから質問を募る。共同記者会見と同じ形式だ。
お招きしたのは、前回、前々回のテーマ東日本大震災からの流れでもある、石巻の遺族2011年から取材の縁を重ねた、津波でわが子を亡くした鈴木由美子さん。筆者が司会役になって当時の体験から現在までの思いを聴き、階段教室で聴いていた受講生に質問をしてもらった。震災で失われたもの、「復興」なる変容の影で見えなくなったもの、そこでメディアの存在とはーを考えるきっかけになったと思う。
教室の受講生と地域の当事者をつなぐ、他者と当事者の間の壁を越えてつながるメディアを自ら体感する。それを4年前、尚絅学院大でメディアリテラシーの講義を持って以来の目標にしてきた。
尚絅では作年から、念願だった「当事者とつながる学びとスキル」という実践講座を始めた。2年目の今期、地元の被災地、名取市閖上の当事者を受講生が取材し、教室でも共同インタビューを重ね、それぞれに出合った視点から来年3月11日に向けて記事を書く。その経過では、閖上と交流する神戸の震災経験者で、ボランティア支援の中核を担ってきた高橋守男さんをZoom で教室につなぎ、インタビューに参加してもらった。「つなぐ」授業の可能性は広いと感じる。こちらの授業も、来月に残す最終回で受講生たちの記事を待つばかり。
今期から尚絅で引き受けた「基盤演習」という講義では、健康や栄養を学ぶ受講生に「伝えることの意味と方法」を学んでもらう10回の授業を通して、「私が今一番伝えたいこと」という共通テーマの文章を書いてもらった。考えてもらったのは、ここでも「自らの当事者性」。自分はどんな人生体験からの当事者なのかーと向き合い、他者にいかに伝えるか。そこに、多様にして唯一無二の物語があるんだ、と相互インタビューを交えて掘り起こしてもらった。「震災を知らない世代」といわれる彼らの何人もが、それまで語らなかったであろう、生々しい震災体験をつづった。そこにも可能性を感じた。
今年は1月に入院して以降、それまでのように遠出の取材に出る機会が減り、不義理もし不本意でもあった。でも、その分、授業の準備と教材づくり、若い人たちとの向き合い方をゆっくり考える時間ができた。後期は計4コマで大変ではあったが、これまでの生活にはなかった時間を得た。成果や手ごたえを感じられた。自分の経験をも「つなぐ」。そういう一年だったのだな、と年の瀬になって思う。