「当事者とつながる授業」、東北文化学園大学で自死遺族・田中幸子さんをゲストに
「当事者とつながる授業」の実践は今週、東北文化学園大のマスコミュニケーション論12回で、仙台の自死遺族の田中幸子さんをゲストにインタビューを行った。
田中さんは、2005年、宮城県警の警察官だった長男健一さんを自死で亡くし、翌年に自ら自死遺族の分かち合いの場「藍の会」を立ち上げた。現在は全国に広がった仲間の会をつなぐ「全国自死遺族連絡会」の代表理事を務め、遺族を社会的不利益から守る運動、自死の危機にある当事者を支援につなぐ相談事業、学校のいじめ自死の第三者委員会への参加など、多忙な活動に取り組む。筆者は今年で18年の取材の縁を重ねる。
授業は今回も、教室の黒板前をゲストと筆者の質疑の場に、40人の受講生が聴き入り、後半に受講生自身が質問するという、共同インタビューの形に。田中さんが取り組む、仙台や亘理町の学校でのいじめ自死事件への関わりからお話を聴き始め、受講生には、遺族である父親の証言のリアルな録音を聴いてもらった。共通して、学校側の姿勢の不誠実さ、守られねばならなかった命の訴えが、時系列の記事の流れからも浮かび上がった。
尚絅学院大のメディアリテラシーの授業でも田中さんを招き、自らの問題として受講生に考えてもらってきた。昨年秋のZOOM授業では、20件近いの質問がチャットで寄せられて、「いじめを見かけた時に何ができるか」など、我が事として受け止めてもらえた。今回はリアルな対面授業で、活発な挙手とはいかなかった。
しかし授業後、自らもいじめられる側の体験をしたという受講生が田中さんに、おそらく初めての告白をし、SNSでつながれた。「できることをしたい」という。授業の感想にも、勇気をもって自らの当事者性と向き合ったコメントがあふれた。
文化学園大の授業は今期、残り2回。来週は、メディアを担う現場からのゲスト・インタビューを予定している。