芳醇な文化と歴史の島・佐渡を再訪、創刊された雑誌『IKKI』に集う仲間と出会う

 佐渡をつい先日訪ねた。今年8月の初の訪佐から間もなく、また呼び寄せらた。夏には車で会津経由の新潟、そこから2時間半のフェリーでの往復を体験したが、このたびは仙台空港からのトキエア(40分!)とジェット船(1時間)。佐渡はもう隣島?になった。人は温かく、風景は懐かしく、時はゆったりとして、驚きや発見は山ほどあり…。それを一度に味わえる再訪になった。
 まず、紹介したいのは『IKKI』。最近、創刊されたばかりの佐渡発の雑誌である。その内容は、<新聞・出版文化が花咲いた佐渡のDNA=歴史を辿る>、<大久保長安と金山の謎に迫る!>などの特集に、鬼太鼓をはじめ「芸能の島」を生んだ地域の系譜、多彩な新旧の佐渡人の語りと寄稿、なぜ特異な環境の島が出現したか~のジオストーリー、美味にして豊かな佐渡の味、そしてルーツの沖縄の視点を佐渡にぶつける作家佐藤優さんとの巻頭対談-。
 金山の世界遺産登録で話題の佐渡ではない、表紙の一文を借りれば「佐渡をまるごと知る新時代の郷土雑誌」。佐渡に興味、関心を抱く人、出合いたい人には、あふれるほどの読み応えだ。
 編集人の本間大樹さん(61)=新潟市出身=は夏に、創刊前のご多忙なさなかに知り合った。今回は訪佐は「IKKI」と佐渡をめぐる、同じローカルジャーナリストとしてのインタビューが第一の目的だった。私と大学は同じで、長く東京の出版社で雑編集を担当された後、古里新潟での雑誌作りを志して、人の縁と佐渡の磁力に引き寄せられた。47年間続いた地域誌『佐渡郷土文化』の高名な編集者・山本修巳さんの他界(昨年2月)を受け継ぐ運命にも巡り合った。
 題号の由来には、もう一つの佐渡出身の人物がいる。北一輝。おそらく、昭和11年の二・二六事件に連座して銃殺された革命思想家としてのみ知られるが、それは一面の見方に過ぎず、佐渡では少年時代から天才を謳われ、地元の文化人たちに薫陶を受け、さまざまな逸話を島に残し、その人と思想は「佐渡という歴史文化からの視点」を欠いては考えられない。筆者自身、この度の旅でその思いを深めた。
 北一輝の生家(当時は造り酒屋)も、フェリー港のある両津の商店街に残る。戦後の持ち主が高齢で手放したのを買い取り、佐渡の心ある人々を仲間に、ゆくゆくは「記念館」として再興しようと訪佐を重ねる人もいる。埼玉県秩父出身の松澤顕治さん(69)。筆者は同じ二・二六事件で銃殺された津軽出身の青年将校・対馬勝夫と妹をめぐる著作『引き裂かれた刻を越えて』(ヘウレーカ)を3年前に執筆刊行し、読んでくれた松澤さんと知り合い、その機縁から佐渡に導かれた。この度の訪佐ではその講演をする機会と、『IKKI』に集う渡辺和弘さん(民俗研究家)ら仲間たちとの出会いを得た。
 ぜひ『IKKI』を手に取っていただけたら(問合せ0259-58-7333)。佐渡の酒のように芳醇な話題、あらためて【TOHOKU360】で詳報させていただきます。