仙台宗教音楽合唱団の「ヨハネ」を聴く、民衆の歌に力

 仙台宗教音楽合唱団で歌う友人のお誘いで、バッハのヨハネ受難の演奏を聴いた(佐々木正利さん指揮)。
 バッハ畢生の大曲に生で触れるのは2度目だが、どちらかと言えば苦手にしていた。が、客席でパンフのテキストを追いながら、ただ聴いたこれまでとは違う大きな印象を得た。それは、まるで主役のようだった「民衆」の歌。合唱団が、オケやソリストたちに伍する圧倒的な迫力で歌った。
 イエスを凶暴なほどの力で「死」へと追い込み、その有罪を疑い自由の身に戻そうとした総督ピラトをさえ「お前の上司のローマ皇帝をも、あの男は侮辱したのだぞ」と脅迫する。2000年前の物語ながら、内外で「事実」をねじ曲げ世界を混迷させている現実と二重写しに。イエスを死なせた十字架を、その後のユダヤの民、末裔が逆に背負わされる差別迫害の歴史まで遠望させるほどだった。
 これが正しい聴き方なのかどうか、分からないし、違うのだろうと思う。が、結団からほぼ半世紀の研鑽を重ねた宗音の歌い手たちの力と演奏の凄さ、あらためて教えてもらった。