ブログ「CafeVita」を復活しました。私の授業から『大学の教室に響いた「オフコース」』、お読みください!
【CafeVita 78】大学の教室に響いた「オフコース」
大学の教室に、オフコース、小田和正さんが響きました。日記でも、手紙でもなく、SNSでもなく、「自分だけが分かる」ではない「外の誰かに向けて伝える」文章を書くという発想の転換は、身に付けるのも、教えるのも難しいもの。そこで、尚絅学院大の健康栄養学を学ぶ1年生たちの授業で聴いてもらったのが、小田さんの歌の詞。
1曲目が、オフコース時代の『ワインの匂い』(1975年~私が大学1年の時)。ピアノが好きなその娘は、初めて二人で歩いた雨の日、傘の中で言った。「ありがとう、あなたはいい人。もっとはやく逢えたら」ー。
2曲目が『心はなれて』(オフコース時代の1981年)。もう遅すぎる、そこへはもう戻れない。2人で追いかけた青い日々がこぼれてゆく。もうここから、先へはゆけないね―。
3曲目が『この街』(小田和正さん、2014年)。人生は思っていたよりも厳しく、夢は遠ざかる。でも、そんな時は迷わず、もう一度、夢を追いかければいい。心に残る伝えられなかった想いも、今伝えればいい。いつだって決して遅すぎることはないー。
1曲目は、「その娘」というまだ遠い関係、切ない儚い片思いの思い出、日記のような、ため息つきの独白、回想⇒1人称の世界
2曲目は、悲しさの極み、愛しながら別れる瞬間のライブのような「私とあなた」の対話、あるいは手紙の文面⇒2人称の世界
3曲目は、自分の、誰にとってもの、そして前2曲の主人公たちの経験さえも包含して、「この街」に生きるたくさんの愛すべき人たち、この歌をどこかで聴く誰かをも励ます⇒3人称の世界
人称が増すごとに世界は広がり、スケールは大きくなり、言葉は強く遠くまで響き、伝える相手も「あなたたち、かれら、どんな人たちも」へ限りなく増えてゆく。「みんな、聴いてほしい~そんなふうに、ステージに立って呼び掛けるような気持ちで文章を考えてみようよ」と、受講生たちにバトンを預けた。
「この街」は、つまり「人生はそこで終わってないよ」「『ワインの匂い』の伝えられなかった彼も、いまからだって伝えればいいし、『心はなれて』で別れた2人も、また出会える時が来る。夢をまた追おうと思った時から、また夢は始まるんだ」と人生の再生を信じさせるし、まして若い日々の失敗も、それは失敗じゃない、何度でもやっていいんだーそう伝えてるんだよ、と受講生たちに話した。
たとえばビートルズ解散から52年後、ジョンの死から23年後に、最後の新曲『Now and then』が生まれたのも、「人生はそこで終わりじゃない」の証明の一つだと思った。
〈Now and then I miss you
Now and then I want you to be there for me
Always to return to me
I know it’s true It’s all because of you〉
『きみに会いたかった』『本当さ、きみがいたから、できたんだよ』ー。ポールがこの歌をどうしても完成させたかった理由も、このジョンの最後の伝言のような詞にあったのではーと。
この授業は5回目で、受講生たちが作品を書き上げるまでの目標へのまだ五合目。でも、18、19歳の若者たちが、わが青春(死語?)のオフコースの歌に聴き入る姿は感動ものだった~歌を授業で役立てて、というJASRACさんにも感謝~。
(【CafeVita】は、古巣の新聞社で生活文化部長の時代から、77回にわたり書いたブログhttp://terafes212.blog.jp/です。編集委員になって震災が起き、それは【余震の中で新聞を作る】という現場ルポ(135回・講談社『現代ビジネス』所収)に看板を替えました。それから12年。仕事を一山越すと気持ちが落ちてしまう今の自分の新しい目標に、【CafeVita】を、78回目から復活させようと思います。人生に終わりがないように…)