拙著「二・二六事件 引き裂かれた刻を越えて」の書評が、「週刊読書人」に載りました。

 二・二六事件(1936年)の蹶起に加わり、28歳で銃殺刑にされた津軽出身の陸軍中尉、対馬勝雄。「優しかった兄がなぜ事件に参加したのか」と問い続け、104歳で他界するまで兄を語った妹たま。
 処刑の朝、一発の銃弾が引き裂いた兄妹の生涯を追った拙著、『引き裂かれた刻を越えて 青年将校対馬勝雄と妹たま』(ヘウレーカ)が、24日発売の「週刊読書人」の書評で大きく紹介されました。
 筆者は、日本近現代史研究者の加藤聖文さん(国文学研究資料館准教授)。満州と満鉄をめぐる問題など、戦前の昭和史の専門家です。
 対馬勝雄の名と言動は、事件の歴史書や裁判記録に断片的に残されていますが、知られざる生涯を私に伝えてくれたのは、記者時代の22年前に弘前で出会った、たまさんでした。
 小作農の出の家に生まれ、しかし、地元で期待の星だった優等生が、貧しい家族を思い軍人の道を選び、その純粋な優しさ故に、大凶作と小作地獄の東北の窮乏を救おうと過激思想に傾く…。
 兄の非情な運命を見つめながら沈黙を強いられ、しかし、兄の記憶の語り部となった妹の「決して癒えることはなかった心の傷」に、二・二六事件の今なお漆黒の闇を見る、と加藤さん。「ノンフィクションを超えた優れた歴史の記録」と評された本書を、ぜひ手に取っていただけましたら。