素晴らしかった合唱団「グラン」演奏会(11/13、仙台・電力ホール)

お 仙台の合唱団「グラン」、お聴きになったことはありますか。指揮者の佐賀慶子さんは秋田出身の音楽家で、私も歌ってきた「メサイアを歌う会」や「レクイエム・プロジェクト仙台」で、笑顔の颯爽とした指導の姿に触れてきました。
 「グラン」(団員50人、ピアノ掛田瑤子さん)とご縁が生まれたのは、11月13日の第3回定期演奏会(@電力ホール)で、レクイエム・プロジェクトの主宰者・作曲家の上田益(すすむ)さんが作曲、寺島が詩を書いた組曲「また逢える~いのちの日々かさねて」(全4曲)を歌うことになったからです。本番間近の練習を聴きにお邪魔し、力強い歌声に感動したことを、先にfacebookに投稿しました。だから、演奏会がとても楽しみでした。
 「歌の力に魅せられて、たくさんの人がここに集う」「みずからが楽しむこと」「人生の歓び哀しみを歌に託し」という団のモットー(代表の男澤亨さん筆)が、プログラムにありました。1stステージの「流浪の民」や「あいや節幻想曲」の歯切れよく、はっきりと響く歌声に、その言葉が表れていました。
 2ndステージは「グランのオハコ」という昭和の懐かしいポップス。男声陣がカッコよく青いスカーフを振る「チャンピオン」、女声陣との掛け合いが楽しい「木綿のハンカチーフ」、素敵にリリカルな「虹と雪のバラード」、わくわくと弾むような「また逢う日まで」―。合唱団というと年配色が濃くなる昨今ですが、「グラン」の歌い手たちは歌声も演出も楽しく若々しい!
 実は、1stステージの前に男澤代表がマイクを握り、コロナで少なくないメンバーが演奏会を休まざるを得ず、難しい、つらい決断の末に開演日を迎えたことを語りました。それでも私の耳には、練習の際に聴いた力強い歌声は変わりないくらいに感じました。
 3rdステージが「また逢える」。私が東日本大震災の被災地(陸前高田や石巻、飯舘村)で出会い、取材した人たちの事実と生きた言葉を紡いだ詩です。日本各地の被災地、戦災地の詩人との協働で、街々に刻まれた歴史の伝承、未来への希望を込めたレクイエムを書き続けている上田さんが、ドラマチックな曲を編みました。
 演奏会の核心となったこの曲で、「グラン」の悲しみや希望への共感はいっそう深く響きました。会場で聴いた知人たちも同意見でしたが、歌声は力強く、詩の一つ一つの言葉がはっきりと響き、真っすぐに客席に届きました。これまで合唱を聴いた経験でも、なかなかないことでした。感動しました。
 日ごろ重ねた佐賀さんと団員の鍛錬の成果に加え、「また逢える」の練習に当たり、その原作になった拙著のルポも練習で読んで詩の世界を深く共有した、というご努力。さらに、 後で聞いた「休んだ仲間の分まで、みんな、がんばって声を出し、歌いました」という団員の方の話に得心しました。それは危機感をばねにした「グラン」の底力、結束の響きだったと。
 閉演後には、「楽しかった。この合唱団なら歌ってみたい」という新しいファンの声も聞かれました。「グラン」のみなさん、おつかれさまでした!